株式会社シンデレラアカデミーと「星座百景」元メンバー篠崎ちひろ氏の訴訟について

株式会社シンデレラアカデミーと「星座百景」元メンバー篠崎ちひろ氏の訴訟について

令和元年12月18日

当職らは、アイドルグループ「星座百景」元メンバーの篠崎ちひろ氏(以下「元メンバー」)の代理人として、かつて元メンバーが所属していた芸能プロダクションである株式会社シンデレラアカデミー(東京都新宿区百人町 以下「シンデレラアカデミー」)から元メンバーに対して提起された損害賠償請求訴訟(以下「本件訴訟」)1について、次のとおり報告します。

元メンバーは、平成28年11月21日、シンデレラアカデミーとタレント入所契約書を交わし、アイドルグループ「星座百景」のメンバーとして活動していました。その後、平成29年4月下旬、「星座百景」から卒業しました。

シンデレラアカデミーと元メンバーの間で締結されたタレント入所契約書の第9条1項には次の規定が明記されております。なお、甲はシンデレラアカデミー、乙は元メンバーを指します。

タレント入所契約書

第9条1項

乙は、本契約期間満了前に解約する場合、甲に対して、乙が甲に所属してから育成、プロモーションに必要とした全ての経費として、甲の所属日から起算して、1日あたり1000円の割合で違約金を速やかに支払う。但し、乙がユニットメンバーの場合、これに加えて、楽曲の再レコーディング費用、フォーメーション再構成費用として楽曲1曲につき10万円の違約金を支払う。

そして、シンデレラアカデミーは、平成30年8月上旬、元メンバーに対してタレント入所契約書の違約罰の定めに基づく違約金請求及びミュージックビデオ再編集費用を求める損害賠償請求訴訟を提起しました。

これに対し、当職らは、元メンバーの訴訟代理人として選任され本件訴訟において、①違約罰の定め及びシンデレラアカデミーの請求行為は公序良俗違反であり無効であること、②シンデレラアカデミーと元メンバーとの契約は労働契約であること等の反論・反証を行いました。

裁判所による指揮のもと訴訟は進行しましたが、令和元年6月21日の口頭弁論期日において、シンデレラアカデミーから和解申出がありました。その内容は元メンバーの金銭支払義務がないこと等を内容とする和解申出でした。

これに対し元メンバーは、違約金規定の有効性判断も含め判決による決着を望んだため、和解には応じられず、また、仮に原告が訴えの取下げ2をしたとしても同意できない旨伝えました。

その結果、令和元年12月18日、シンデレラアカデミーが請求の全てを放棄したことにより本件訴訟は終了しました。

請求の放棄とは、原告が請求としての権利主張が不当であると自認する訴訟上の陳述です3。すなわち、本件は原告シンデレラアカデミーが、契約書の違約金規定等を証拠として元メンバーに対し訴訟提起をしたのにもかかわらず、結果的に、自ら請求としての権利主張が不当であると認め請求の全ての放棄をしました。

以上

レイ法律事務所(担当弁護士:河西邦剛、近藤敬、森伸恵)
※守秘義務・関係者に対する配慮等の関係上、弊所へのご取材をいただいた場合であっても、個別のご取材には応じかねます。追加でお伝えすべきことがある場合には、弊所のホームページ等にて発表させていただく所存でございます。

1 東京簡易裁判所平成30年(ハ)第37088号 原告シンデレラアカデミー、被告元メンバー等
2 訴えの取下げには被告の同意がなければ効力は生じません(民事訴訟法 第261条)
3 条解 民事訴訟法 弘文堂 参照