医師も残業代はもらえる?労働問題に強い弁護士が詳しく解説!

職業:医師

常勤医(勤務医)等は、医療現場の特殊性から、長時間労働や無報酬の時間外労働が常態化し、法令で定められた労働時間規制や割増賃金制度が十分に適用されてこなかったという歴史的背景があります。
しかし、労働基準法では、『1日8時間』または『週40時間』を超える労働について、病院(使用者)は、36(サブロク)協定を締結したうえで、残業代(割増賃金)を支払うことが義務付けられています。

  • ①使用者と労働者が36協定を締結しなければ、使用者は労働者に1日8時間または週40時間を超える労働をさせることはできない
  • ②36協定締結の上、1日8時間または週40時間を超える労働について割増賃金を支払わなければならない

上記①②のルールは、業種にかかわらず適用されるため、常勤医(勤務医)等であっても原則として残業代の支払い対象です。
また、2024年に医師の働き方改革(時間外労働の上限規制導入など)により、医師の労働環境が見直されていることもあり、近年では常勤医(勤務医)等の残業代が支払われるケースも少なくありません。

本記事では、医師の残業代について、労働問題に強い弁護士が詳しく解説します。

弁護士紹介

近藤 敬 弁護士

東京地方裁判所労働専門部出身。そのキャリアから法律は勿論、裁判所の考え方に沿った証拠集め、相手方との交渉を得意としている。

労働事件以外では、労働法をテーマとした厚生労働省主催の講演にも多数登壇しており、また、新聞・ネットメディアからの取材対応や、テレビでも労働問題に詳しい弁護士として出演し、日本社会における適正な労働環境の構築に向けて日頃から発信をしている。

近藤弁護士

常勤医(勤務医)・研修医・アルバイト医師それぞれの取り扱い

まず、広義で「勤務する医師」としての取り扱いを説明します。

  • ・常勤医(勤務医):雇用契約の場合、残業代支払いの対象
  • ・初期・後期研修医:研修医も労働者であり、残業代が発生
  • ・アルバイト医師:日給や時給契約であっても、規定時間を超えた場合には残業代が発生

よくある「残業代は支払われない」とされる誤解

年棒制だから残業代は発生しない?

事前に決められた年俸に基づき、毎月一定額を給与として受け取っている場合でも残業代を受け取れることはあります。
これは病院(使用者)と常勤医(勤務医)の間の契約によるところで、以下のような場合には、残業代が発生する可能性があります。

  • ・年俸に残業代が含まれていない
  • ・基本給と残業代の区別が不明確
  • ・年棒に残業代が含まれているが、実際には、残業代以上の残業をしている

一般的に「年俸制だから残業代は出ない」という認識は誤りです。使用者との契約の内容をチェックしてみましょう。

固定残業代(みなし残業代)に残業代が含まれている?

固定残業代(みなし残業代)が支給されている場合、その金額が残業代としてあらかじめ給与や年俸に含まれているとされます。
しかし、固定残業代(みなし残業代)を超過した部分についてはどうでしょうか?
例えば「給与●●万円(固定残業代●万円を含む)」と契約書に記載されていた場合、固定残業代を上回る時間外労働が発生した場合には、その超過分については、別途、割増賃金を支払う義務があります。

また、「給与●●万円(固定残業代を含む)」として、固定残業代がいくらか契約書に記載されていなかった場合は、上でも述べた「基本給と残業代の区別が不明確」に該当するため、残業代は発生します。

裁量労働制だから残業代は発生しない?

医師の業務は専門性が高く、裁量労働制(正式名称:専門業務型裁量労働制)であると誤解を受けがちです。
しかし、専門業務型裁量労働制では20の業務のみが対象として定められており、医師の業務はその対象に含まれていません。
したがって、「医師は裁量労働制だから、残業代は発生しない」という認識は誤りです。

業務委託契約、フリーランス契約だから残業代は発生しない?

病院との契約が「雇用契約」ではなく「業務委託契約」「フリーランス契約」などである場合は、労働基準法の適用外となるため、原則、残業代の支払い義務はありません。
しかし、「業務委託契約」「フリーランス契約」とされる働き方には以下のような実態が必要となります。

  • ・労働時間の拘束がなく、業務内容の裁量がある
  • ・原則として委託元(病院)から指揮命令を受けない

業務委託契約やフリーランス契約という名称の契約を締結していたとしても、実態が雇用関係に近い場合は、雇用契約とみなされて残業代が発生する可能性があります。

管理監督者・管理職だから残業代は発生しない?

一部病院では、医師を管理監督者・管理職扱いとし、残業代を支払わない運用をしていることがあります。しかし、そういった運用も以下のような「管理監督者の定義」を満たさなければ違法です。

  • ・病院経営に参画する立場(人事・予算に権限を持つ)
  • ・勤怠(出退勤)を自分で決定できる自由がある
  • ・他の医師に比較して相応の地位、待遇がある(高い報酬が支払われているなど)
  • など

医局長、診療科長など「役職がある=管理監督者・管理職」というわけではなく、上のようなことに該当していなければいわゆる「名ばかり管理職」として、残業代を請求できる可能性があります。

「宿日直」「自己研鑽」「当直明け勤務」は残業代が発生しない?

以下のような時間帯は、しばしば「労働時間ではないので、残業代は発生しない」として取り扱われがちです。

  • ・宿日直(宿直・日直)
  • ・オンコール待機(宅直)
  • ・自己研鑽(勉強・カンファ・論文執筆など)
  • ・当直明けにそのまま続く通常勤務

しかし、実態として業務を行っていたり、業務命令や参加義務があれば、労働時間に該当し、残業代は発生する可能性があります。

過去の(退職後でも)残業代は取り戻せる?残業代請求の基本知識

退職後でも未払い残業代の請求は可能です。むしろ、在職中は勤務先内での見られ方を気にする人が多く、退職後に行う人が多い印象です。ただし、残業を証明する資料(働いた証拠)集めは、退職後だと難度が上がりますので、在職中に行うと良いでしょう。

残業代請求権の消滅時効の時効期間は3年です。
請求しないでいるとあなたの権利が徐々に失われていく結果となりますのでご注意ください。

残業を証明する資料

残業代を請求するにあたっては、まず「働いた証拠」を集めることが重要です。また、証拠集めは在職中にやることをお勧めします。
以下、働いた証拠となり得るものです。

証拠となるもの
  • 出退勤の記録(タイムカードなど)
  • 医療記録(電子カルテなど)
  • メール・LINE
  • 勤怠管理アプリ
  • 労働時間管理ソフト
  • 日報・週報
  • 入退館(室)記録
  • 給与明細、勤務記録
  • ボイスレコーダー
  • シフト表・予定表
  • 雇用契約書
  • メモ・日記・備忘録
  • パソコンのログオン・ログオフ履歴
  • など
まとめ:医師でも残業代は請求できる。泣き寝入りしない選択を!
医師は専門職であっても、雇用契約上の勤務であれば法律上、一人の労働者です。
慣習や勤務先(使用者)側から言われることは気にせず、正しい知識と手段を持てば、残業代の請求は可能です。
いまや未払い残業代請求に関する相談は、多くの弁護士・法律事務所が無料で受けていますので、まずは相談だけでもすることをお勧めします。

解決事例

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    解決までの流れ

    解決までの流れ

    請求先の会社と任意交渉(示談)による解決の場合、ご契約後に未払い残業代の金額を明記した請求書面を弁護士から送付し、請求先の会社と交渉を開始してから早ければ約2週間~2か月で任意交渉(示談)が成立します。 また、交渉によって解決しない場合は労働審判申立て、訴訟提起を検討していきます。

    未払い残業代請求について、もっと詳しく知りたい方はこちら

    残業代簡易計算ツール
    (個人情報入力不要)

    Q1
    現在、残業代請求先の会社の『退職日』から3年以内ですか?

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    Q2
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    「この金額を取り戻したい」という方は弁護士へご相談ください。

    入力された対象期間の未払い残業代においては、残念ながら、現在請求できるものはないかと思われます。

    なお、残業代簡易計算ツールでの計算結果は、あくまでも簡易的な計算による目安を示すものです。
    実際に請求できる金額は、勤務先の就業規則、勤務先との契約内容等によって異なります。

    ご注意

    残業代請求の時効は3年です

    未払い残業代は発生日(本来支給される日)から3年経つと時効が成立します。(請求できなくなります)

    ※2020年3月31日以前の発生日の残業代の時効は2年です。

    免責事項
    • 1. レイ法律事務所(以下、「弊事務所」といいます)が、作成・提供する残業代簡易計算ツール(以下、「本ツール」といいます)の計算結果は、あくまでも簡易的な計算による目安を示すものです。 実際に請求できる金額は、勤務先の就業規則、勤務先との契約内容等によって異なります。
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