社会環境(政府の対策、同性婚、性別の変更、学校等)

社会環境

① 自殺対策

セクシュアルマイノリティの人は孤独感・疎外感を感じ、自殺念慮率が高いという複数の調査結果があります。

2005年に日本在住の男性を対象に行われた調査によりますと、ゲイとバイセクシュアルの男性の中には、異性愛の男性の約6倍もの自殺未遂経験者がいるとの結果が明らかになったとのことです。

さらに、世田谷区が2016年にセクシュアルマイノリティの人を対象に行った調査結果でも「経験したことがあるもの―自殺したいと思った 480人/965人 49.7%」でした。
国は、2017年7月25日に自殺総合対策大綱の改定を閣議決定しました。

大綱では、

法務省

「性的マイノリティへの支援の充実 法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じる。 人権相談等で、性的指向や性同一性障害に関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた 適切な措置を講じる。

文部科学省

性的マイノリティは、社会や地域の無理解や偏見等の社会的要因によって自殺念慮を抱えることもあることから、性的マイノリティに対する教職員の理解 を促進するとともに、学校における適切な教育相談の実施等を促す。

厚生労働省

性的指向・性自認を理由としたものも含め、社会的なつながりが希薄な方々の相談先として、24時間365日無料の電話相談窓口(よりそいホットライ ン)を設置するとともに、必要に応じて面接相談や同行支援を実施して具体的な解決につなげる寄り添い支援を行う。

「性的指向や性自認についての不理解を背景としてパワーハラスメントが行われ得ることを都道府県労働局に配布するパワーハラスメント対策導入マニュアルにより周知を図るほか、公正な採用選考についての事業主向けパンフレット に「性的マイノリティの方など特定の人を排除しない」旨を記載し周知する。また、職場におけるセクシュアルハラスメントは、相手の性的指向又は性自認 にかかわらず、該当することがあり得ることについて、引き続き、周知を行う。としています。

性的指向や性自認についての不理解を背景としてパワーハラスメントが行われ得ることを都道府県労働局に配布するパワーハラスメント対策導入マニュアルにより周知を図るほか、公正な採用選考についての事業主向けパンフレット に「性的マイノリティの方など特定の人を排除しない」旨を記載し周知する。

また、職場におけるセクシュアルハラスメントは、相手の性的指向又は性自認 にかかわらず、該当することがあり得ることについて、引き続き、周知を行う。としています。

② 同性婚

明治憲法の特徴

  • 婚姻に戸主の同意が必要とされていた。
  • 女性の地位が低かった。

現行憲法

現行憲法では、男女平等及び個人の尊重をするという考え方から、婚姻が当事者の合意のみによりできるとした。

【憲法第24条】

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」
憲法は同性カップルの婚姻を否定していないのでは?

「両性」をどう解釈するかについて二つの考え方があります。

A 男性と女性と解釈する(同性婚否定)
B 両当事者と解釈する(同性婚肯定)

⇒個人の尊重・幸福追求権(憲法13条)、平等原則(憲法14条)

「同性婚を求める訴訟(民法や戸籍法に同性婚を前提とする規定がないのは憲法違反)」での国側の言い分

国「憲法は同性婚を想定していない。」
Q「憲法は同性婚を想定していない。」の意味とは??

憲法には、それぞれの人権・価値について3つの態度があります。

  • A 権利として保護し価値を推奨している態度(個人の尊厳や表現の自由等に対する態度)
  • B 禁止する態度(戦争に対する態度のようなもの)
  • C 憲法上は何も言わない態度(どちらでも気にしない態度)

現在の国側の言い分である「憲法は同性婚を想定していない。」の意味が、B憲法は同性婚を禁止する態度なのか、C憲法上は何も言わない態度なのか、分かりません。

自治体レベルでは、パートナーシップ証明・宣誓を行う自治体が増えてきていています。都道府県レベルでは茨城県が初めてです。アジアでは台湾が初めて同性婚を制定(2019年)しました。

③ 性別の変更

性別の変更

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)
特例法では、性別を変更するには5つの要件を満たす必要があります。

(1) 20歳以上であること

不可逆的な手術を受け、重要な判断を行うには成年に達していることが要求される

(2) 現に婚姻していないこと

婚姻している人が性別を変更した場合、同性婚を認めることになるため。

(3) 現に未成年の子がいないこと

特例法が制定された2003年当時は「子がいないこと」という要件でした。
しかし、子供がいるひとは、一切性別変更できないという批判があり、2008年6月に、現に未成年の子がいないことに改正されています。
当事者の幸福追求権や法の下の平等、親子関係等の社会秩序、子供の福祉の調整

(4) 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

(5) その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えること

当事者に性別適合手術を要求しています。これは、変更前の性別の生殖機能により子が生まれることに伴う社会的混乱や、外観から生じる生活上の混乱を防止する趣旨で定められています。
しかし、性別適合手術は身体への重大な侵襲を伴います。体質、病気により手術できない人もいます。そこで、この要件は問題視されています。
ドイツ、イギリス等、性別適合手術が必須の要件ではない国も多いです。

④ 名前の変更

トランスジェンダー・性同一性障害の方で女性を想起される名前、男性を想起される名前を変えたいという方もいると思います。
そのような場合、家庭裁判所に「名前の変更の審判」を申立て、家庭裁判所に「正当な事由」があると認められた場合には、名前を変更することができます(戸籍法107条の2)。
戸籍法107条の2「正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」
「正当な事由」とは、一般に名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合をいうとされています(名古屋家庭裁判所HPから抜粋)。

家庭裁判所の許可が出たら、本籍地又は住所地の役所に名の変更の届出をします。
届出にあたっては審判書謄本のほか、戸籍謄本などの提出を求められることがあります。
詳しくは、役所にお問い合わせください。

⑤ 学校

学校

LGBT当事者の人で、「子供の頃にジェンダー/セクシュアリティに由来し(LGBT当事者であることで)困ったことージェンダー/セクシュアリティに関する正しい情報の不足 643人/965人 66.6%」と答えた人がいます。
日本では家庭科の教科書や政治・経済、世界史の教科書に「LGBT」という言葉が盛り込まれ、性の多様性に触れる教科書が増えてきました。

2015年に文部科学省は全国公立私立学校に対し、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通達を出し、さらに2016年には教職員に対し、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について(教職員向け)」というパンフレットを配布し、教職員によるセクシュアルマイノリティの生徒への関心・理解が進むよう促しています。
2017年には、いじめ防止対策推進法に基づき「いじめの防止等のための基本方針」を改定し、「性同一性障害や性的指向・性自認に係る生徒に対するいじめを防止するため」、「教職員への正しい理解の促進や、学校として必要な対応について周知する」としています。

海外を見てみますと、

  • ・高校の教科書に性の多様性やトランスジェンダーやゲイ・レズビアンの人権擁護パレードの写真を載せ、セクシュアリティを生物学的・歴史的・社会的に説明している国(フランス)
  • ・「セクシュアリティとパートナー選び」と題し、異性愛だけではなく同性に魅かれるゲイやレズビアンがいることを説明している国(ドイツ)
  • ・「ジェンダーと権利」という単元を持ち、教科書に「異性愛者、同性愛者、トランスジェンダーなど、社会の中ではさまざまな人が学習、仕事、生活をしていること」と明記している国(中国)

等があります。

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(LGBT部門担当:弁護士 森 伸恵)

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