【弁護士コラム】自己破産をすると全て支払わなくても良くなる?
■自己破産をすると全て支払わなくても良くなる?
「自己破産」は、借金の返済などで生活が苦しくなった人たちに向けた、国が認めたリスタートのための制度であり、借金を0にすることができます。
もっとも、実は、自己破産でも全ての借金を0にできるわけではありません。
■非免責債権とは?
まず、自己破産の制度には「免責」という言葉があります。簡単にいえば「免責」されることによって、借金などのお金の返済義務がなくなるのです。
では、全ての返済義務がなくなるのでしょうか?実はそうではありません。
なぜなら、全ての返済義務がなくなると、大きな不都合が生じるからです。 たとえば、自分に大きな落ち度があって起こしてしまった交通事故による損害賠償のように、わざとまたは大きな落ち度によって、人にケガをさせてしまった損害賠償の支払義務は、自己破産してもなくなりません。 このような場合に、「自己破産したから支払う必要がありません」として免責を認めてしまうと、被害者の方の救済ができないからです。
こういった場合、自己破産後も支払いをしなければなりません。こういった支払い義務が残る債権を「非免責債権」といいます。
■夫婦間の生活費や養育費も免責されない
その他にも、夫婦間の生活費や、子どもに対する養育費の支払い義務も、自己破産をしても免責されません。
生活費や養育費は、相手方や子どもの生活費を支えるために不可欠であり、支払い義務がなくなり、支払いをしなくなったら、相手方や子どもが生活できなくなるということがあるからです。
そうはいっても、多額の養育費があり、生活の立て直しが困難で、現実的に支払いができない場合、子どもを監護している相手方に対して、事情を話し養育費を減額してもらったり、また、話し合いが上手くいかなかった場合には、養育費の減額の調停を起こしたりすることが考えられます。
■税金も免責されない
また、税金も免責されません。これは自己破産を利用して、税金を免れることを避けるためです。しかし、現実的にすぐに支払えない場合には、猶予を求めたり、分納をしたりすることはできます。
また、一定の条件を満たせば(厳しい条件ですが)、税金の免除をすることもできます。
■裁判になることも?
さらに「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」も免責されません。この悪意とは「積極的な加害意思」のことです。もっと、わかりやすくいえば、相手方を攻撃する意思や陥れる意思があり、損害を生じさせた場合です。たとえば、詐欺などですね。
実は、破産後にこの「悪意で加えた不法行為だ!」と言ってきて、債権者が訴えてくる場合もあります。その場合、こちらとしては、「積極的な加害意思」がなかったことを主張していきます。
弁護士に相談する際には、税金も含めて、全てを申告し、自分の支払い義務が全てなくなるのかをしっかりと検討し、破産後の生活の立て直しを考えましょう!